そして父になる。

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4/28(火)

4月としては暑すぎる気候だった。

よく晴れて,日の光が当たると動いていなくても汗ばむような陽気。

 

昼前に,病院の最寄り駅へ着き,前日から入院している妻のもとへ。

陣痛促進剤が点滴で左腕に注入されていた。

8:30から点滴を始めていたが,陣痛はまだ来ないようだ。

もう,当初の予定日を12日も過ぎている。

 

初産は遅れがちである,という情報を聞いていたが,

身近にいる友人,知人は初産でも予定日より早く出産している人が多い印象であり,

僕も妻も,不安な日々を過ごしていた。

そして点滴を打っても,まだ陣痛が来ない。

このままいくと,帝王切開もありうる。

妻は,できることなら帝王切開は避けたかったようだ。

確かに,自分のお腹が切られるのは誰だってイヤだろう。

僕も何度か想像してみたが,考えるだけで顔の形が変わるほどの痛みだった。

 

軽く談笑したあと,連絡があるまで外出することにした。

病院は駅から徒歩7分ほど。

駅まで歩いて戻り,ロッテリアで読書をして過ごす。

2時間ばかりして,落ち着かなくなり,病院方面にあるイオンへ移動した。

書店をぶらぶらし立ち読みしていると,LINEで連絡が来た。

うまれそう

句読点も絵文字もスタンプもないところに,

深刻さがうかがえる。

走った。

照りつける日差しの下,いま走らなくていつ走るのか,

という思いで駆け抜けた。

所属するランチームAdmiralで最速の男がなりふり構わず走る様子は,

どこからどうみてもただ事ではないと知り得る光景だったであろう。

 

部屋に着くと,痛みに耐えながら悶絶している妻がいた。

何かしゃべっていたが,ほとんど聞き取れない。

本当につらそうだった。

「2階へ行っていて」

とだけ聞き取れたので,部屋をあとにし,

分娩室のある2階の廊下で待つことにした。

待つこと10分ほど。まだ降りてこない。

待ちきれず,また3階の病室へ戻ってみた。

2人の助産師さんが対応していくれていた。

僕は部屋の外で待つことにした。

 

時折聞こえる妻のつらそうなうめき声が聞こえる度に,

僕の心臓も締め付けられた。

 

しばらくして,分娩室へと移動となった。

妻の希望で,立ち会いはしないことが決まっていたので,

分娩室の外で待った。

 

壁一枚隔てた向こう側で妻が必死に戦っている。

そう思うと情けなくなった。

出産のとき,本当に男は無力である。

 

祈るような気持ちでずっと待っていた。

時に落ち着かず,歩き回らざるを得ないこともあった。

ドラゴンクエストⅤのシーンを思い出した。

今日からパパスになるんだ。

 

どれくらいの時間が経っただろうか。

通常の診察を終えた先生が分娩室へ入っていった。

いよいよ産まれるのだ。

 

妻は辛抱強く,あまり外まで声が漏れてくることはなかった。

たまに声が聞こえる度,がんばれ,と心に念じた。

手のひらがどんどん汗ばんでくる。

 

少し大きめの,規則正しい妻の声が聞こえたと思った次の瞬間。。。

 

産声があがった。

新しい命がこの世に産まれたのだ。

 

産声が聞こえた瞬間,涙があふれ出てきた。

良かった。本当に良かった。

 

 

こうして僕は父になったのだ。

痛みに耐えて産んでくれた妻。

ぼくらのところに来てくれた娘。

僕と妻を産み育ててくれた両親。

あらゆる存在に感謝します。

ありがとう。

 

★★★★★★★★★★

【編集後記】

父親としての僕も産声をあげました。

娘とともに成長していきます。

 

愛する娘へ,ないすとぅみーとぅ!

 

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